April 26, 2021

米加州「2045年ゼロカーボン電力」、達成には太陽光100GW新設 運輸と建物の電化で電力需要は3倍を想定

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すでに再エネ比率は33%超

 米カリフォルニア州は、多くのプログラムを通じて、クリーンエネルギーの未来に向けて取り組んでいる。例えば、再生可能エネルギーやエネルギー効率・省エネのほか、化石燃料資源からの脱却に必要なエネルギー貯蔵技術の促進などで、すでに大きな成果を上げている。

 2020年時点で同州の電力供給全体に占める再エネの比率は既に33%を超えており、発電に伴うCO2排出量は1990年比で43%減少している。

 クリーンエネルギーへの転換をさらに加速するため、2018年9月カリフォルニア州で「2045年までに100%ゼロカーボン電力」を目指す上院法案「100(SB100)」が可決し、法律となった(図1)。

図1●カリフォルニア州が2045年までにクリーン電力100%を達成するプロセス
(出所:CEC)


具体的に、SB100には、以下のような目標設定などの内容が盛り込まれた。

 (1)2045年までに、温室効果ガスを排出しない太陽光や風力を含む再エネとゼロカーボンの資源で、カリフォルニア州で販売されるすべての電力を賄う

 (2)2030年までに、カリフォルニア州の電力の少なくとも60%を再エネで供給することを義務付ける州の再エネポートフォリオ基準(RPS)を更新

 (3)100%クリーンな電力を達成するため、カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)、カリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)、およびカリフォルニア州大気資源局(CARB)は、(各機関の)既存の法律に基づくプログラムを使用して、2021年まで、およびその後4年ごとにSB100に関する共同方針レポートを発行する

 今年3月に、SB100に基づき、CEC 、CPUC とCARB の3つの機関は、SB100を実施する際の課題と機会を評価するための第一ステップとし、「2021 SB 100合同機関レポート」を発表した。

 同レポートでは、100%クリーン電力を達成するために必要な追加的資源と資源の設置導入量の初期評価、及び関連するコストが含まれており、様々なコンディションとテクノロジーのもとで、これらの要因が分析されている。

「電化」推進で経済全体を脱炭素化

 ところで、「2045年までに100%ゼロカーボン電力」と聞くと「現在」供給されている小売電力のゼロカーボン化と思えるかもしれないが、実は、脱炭素のターゲットはそれだけに留まらない。

 同州のジェリー・ブラウン前知事は2018年に、SB100成立に加え、2045年までにカリフォルニア州の経済全体をカーボンニュートラルにする方法を検討するよう州当局に指示する州知事命令に署名した。つまり、この命令は、カリフォルニア州の電力部門だけでなく、運輸や製造業など、その他の部門でのCO2排出量を削減する変革、つまり電化への移行が考慮されるのである。..Read More Here

April 19, 2021

風力と太陽光で2035年に「1100 GW」、電力部門の脱炭素に現実味 米カーボンニュートラル戦略、変動性再エネと蓄電池を大量導入

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CO2排出量は予測値から半減

 温暖化ガス削減を目指し「カーボンフリー」「カーボンニュートラル」という言葉が、企業、市町村などの地方自治体、州、そして連邦政府で頻繁に使われるようになった。実際、バイデン新米国大統領も、「2035年までに100%カーボンフリー・エネルギー」という野心的な目標を設定し、気候変動対策に乗り出している。

 そんな中、今月米エネルギー省(DOE)の研究所であるローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)が、「ゼロまで道半ば:エネルギー(電力)部門のカーボンフリーへの進展」と題するレポートを発表した。

 タイトルから、「米国はカーボンフリーまでもう半分達成したのか?」と疑問に思い、同レポートの筆者でLBNLのシニア・サイエンティストを務めるライアン・ワイザー氏に質問してみると、「『ゼロまで道半ば』とは、2020年の(電力部門における)実際の温暖化ガス排出量が、以前に予測された2020年の排出量より52%少なかったことを意味する」との回答だった。

 ちなみにこの場合の予測値は、平常状態が惰性的に続く「なりゆき(Business As Usual=BAU)シナリオ」を採用している。

 米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が発表した「2005年(米国)年次エネルギー見通し」では、2020年の電力供給からの年間CO2排出量は、BAUシナリオで3008 MMT(百万メトリックトン)になると予測されていた。しかし、実際、2020年の電力部門からのCO2排出量は1450 MMTに留まり、ワイザー氏が言ったように、予測より52%、つまり半分に減った(図1)。...Read More Here

図1●電力部門での「BAUシナリオ」によるCO2排出量予測(グレー色面)と実際のCO2排出量(薄緑色面)
(出所:LBNL)


April 5, 2021

「原発」跡地に690MWのメガソーラー建設へ、蓄電池を併設 2050年までに太陽光は原子力を上回り主要電源に

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 米アイオワ州にある、同州で唯一だった原子力発電所の跡地に出力690MWものメガソーラー(大規模太陽光発電所)開発プロジェクトが着々と進んでいる。

 米国中西部は「コーンベルト」と呼ばれ、トウモロコシが主要作物として盛んに生産されている。米西部に位置するアイオワ州は、その中心地であり、米国の燃料エタノール生産能力の4分の1を占める米国の主要なバイオエタノール生産地でもある。

 トウモロコシ由来のバイオエタノール、バイオディーゼルだけでなく、発電分野でも再生可能エネルギーの導入量が多い。実は、アイオワ州は、これまで米国でメガソーラーなどの大規模再エネ発電所の普及を牽引してきた「再生可能エネルギー・ポートフォリオ・基準(RPS)」制度の法案を全米で最初に成立させた州である。1983年のことだ。

 米エネルギー省・エネルギー情報局(EIA)によると、2019年のアイオワ州における総発電量のうち、5分の2以上は再エネで、そのほとんどが風力発電である。事実、同州はテキサス州とオクラホマ州に次ぐ米国で第3位の風力発電導入量を誇る(図1)。

図1●アイオワ州は米国の州別風力発電導入量で3番目
(出所:Iowa Farm Bureau)

太陽光では出遅れ

 しかし、太陽光発電の導入量では、大きく遅れている。米太陽光エネルギー協会(SEIA)によると、同州における2020年までの太陽光発電の累積導入量は、わずか287.8MWに過ぎない。米国における州別導入量での順位は35位に留まる。だが、2023年には太陽光の順位も飛躍するかもしれない。

 太陽光の躍進を予感させる話題の1つに、米ネクステラ・エナジーが、アイオワ州パロ郡の「デュアンアーノルド原子力発電所」跡地にメガソーラーを建設すると発表したことがある(図2)。...Read More Here

March 25, 2021

米最大の営農型太陽光を「コミュニティソーラー」として運営 地産地消型で食、エネルギー、雇用、そして低所得層を支援

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産官学で「営農型」を研究・推進

 雄大なロッキー山脈の麓に位置し、自然に恵まれた米国コロラド州ボルダー郡で、全米最大規模の「アグリボルタイック」が稼働した。

 「アグリボルタイック」とは、農業(アグリカルチャー=Agriculture)と太陽光発電(フォトボルタイック=Photovoltaic)合わせた造語で、農地の上に太陽光パネルを設置して、1つの土地を農業と太陽光発電で二重利用する仕組みである。日本では、一般的に「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」と呼ばれている。

 「ジャックズ・ソーラー・ガーデン」と呼ばれるこのアグリボルタイックは、太陽光パネルの合計出力1.25MWに達し、3276枚ものパネルが5エーカーの農地を覆っている(図1)。

図1●「ジャックズ・ソーラー・ガーデン」でのイベント風景
(出所:Werner Slocum/National Renewable Energy Laboratory)

 

ちなみに、数百MW級のメガソーラー(大規模太陽光発電所)が稼働する米国で、1.25MWを最大規模と呼ぶのは腑に落ちないように思われるが、正確に言うと「ジャックズ・ソーラー・ガーデン」は、米国で最大規模となる「研究用」のアグリボルタイックとされる。

 研究に携わるのは、コロラド州ボルダーに本拠地を置く米エネルギー省の国立再生可能エネルギー研究所(NREL)のほか、コロラド州立大学、アリゾナ大学が参加し、野生の花、牧草地と草原の草、受粉者の生息地、さらにニンジン、タマネギ、トマト、スカッシュなどの作物を太陽光パネルの下、そして周りで育てる最善の方法を研究する。

 さらに、非営利団体(NPO)のスプラウト・シティー・ファームズと提携することで、このガーデンで作物を栽培し、さらに若い、次世代を担う農家がアグリボルタイックの技術を訓練・習得できる場所ともなる。スプラウト・シティー・ファームズは、コミュニティの環境と健康の改善、そしてレジリエンス(回復力)の強化に努める都市農業分野のNPOでコロラド州デンバーを拠点としている(図2)。...Read More Here

図2●「ジャックズ・ソーラー・ガーデン」の研究パートーナー
(出所:Jack’s Solar Garden